ゲームは頭に良い?悪い?認知能力への影響をメタ分析から検証

要点: ゲームが認知能力に与える影響は、種類と測り方で結論が分かれます。Bediouら(2018年、Psychological Bulletin)のメタ分析では、アクションゲーム経験者は非経験者より認知課題の成績が高く(効果量g≈0.55)、非経験者に訓練させた介入研究でも中程度の効果(g≈0.34)が報告されました。伸びは視空間認知と注意で大きく、抑制や言語では小さい傾向です。一方Salaら(2018年、同誌)は、対照群の質を揃えると訓練効果はほぼ消えると報告し、出版バイアスを指摘しました。ゲームが知能全般(g因子)を押し上げる証拠はなく、効果があるとしても訓練した課題に近い領域に限られます。
「ゲームばかりしていると頭が悪くなる」と「ゲームは反射神経や判断力を鍛える」は、どちらもよく聞く主張です。研究を追うと、答えはゲームの種類と何を測るかで変わります。この記事では、賛否それぞれの代表的な研究を並べて、現時点で言えることと言えないことを分けます。
アクションゲーム研究が示したもの
この分野の出発点は、GreenとBavelier(2003年、Nature)です。アクションゲームの習慣がある人は視覚的注意の課題で成績が高く、さらに非経験者に10日間(1日1時間)アクションゲームを訓練させたところ、同じ課題の成績が上がりました。「経験者は元から得意な人」という説明だけでは済まないことを示した点で重要な研究です。
その後の研究をまとめたのがBediouら(2018年、Psychological Bulletin)のメタ分析です。結論は2つに分かれます。
- 経験者と非経験者の比較(横断): 経験者のほうが認知課題の成績が高い。効果量はg≈0.55で、心理学では中程度から大きい部類
- 非経験者を訓練する介入研究: 効果量はg≈0.34と小さくなるが、ゼロではない
伸びが大きかったのは視空間認知(回転や位置の把握)と、上から下への注意の制御でした。逆に、抑制やマルチタスク、言語的な課題では効果は小さいか不明瞭でした。つまり、効いているのは「アクションゲームで実際に使う能力」に近い領域です。
同じ学術誌に載った反論
ところが同じ年、同じ学術誌に正反対の結論が掲載されました。Sala、Tatlidil、Gobet(2018年、Psychological Bulletin)は、ゲーム訓練が認知能力を高めるかを包括的に再分析し、全体の効果は小さく、研究の質が高いほど効果が小さくなると報告しました。
ポイントは対照群の扱いです。訓練群と「何もしない群」を比べると、訓練群には期待や新奇な活動そのものの効果が乗ります。訓練群と「別の活動をした群(能動的対照群)」を比べると、その分が差し引かれます。Salaらの分析では、能動的対照群を置いた研究に限ると効果はほぼゼロでした。さらに、小さい研究ほど大きい効果を報告する出版バイアスの兆候も指摘されています。
この2つのメタ分析は、対象にしたゲームの範囲(アクションゲームに絞るか、ゲーム全般か)と研究の選び方が違います。したがって「どちらが正しいか」というより、アクションゲームに絞った狭い主張は残り、ゲーム全般が認知能力を高めるという広い主張は支持されない、と読むのが妥当です。同じ構図は脳トレ趣味の効果やバイリンガルと実行機能でも繰り返し見つかっています。
子ども約2,000人のデータ
「ゲームは脳に悪い」という側の主張はどうでしょうか。米国の大規模な脳発達研究(ABCD研究)の参加者を分析したChaaraniら(2022年、JAMA Network Open)は、9〜10歳の子ども約2,000人を、ゲームをまったくしない群と1日3時間以上する群に分けて比較しました。
結果は、ゲーム群のほうが反応を止める課題(抑制)とn-back課題(ワーキングメモリ)で成績が良く、脳画像でも注意と記憶に関わる領域の活動が高いというものでした。ただしこれは横断研究です。ゲームが能力を高めたのか、元々こうした課題が得意な子がゲームを好むのかは区別できません。著者ら自身もその点を明記しています。
また、この研究が測ったのは認知課題の成績であって、学業成績や睡眠時間ではありません。ゲームの時間が睡眠や運動、学習の時間を奪うなら、その影響は別枠で生じます。デジタル認知症の記事で扱ったように、画面時間そのものが脳を壊すという証拠は弱い一方、何を置き換えているかは重要です。
どう読むか:分野ごとに効き方が違う
以上を整理すると、ゲームの影響は「頭が良くなる/悪くなる」という一本の軸ではなく、分野ごとに見る必要があります。
- 視空間認知・視覚的注意: アクションゲーム経験者で成績が高く、訓練でも一定の効果。もっとも証拠が厚い領域
- 処理速度・反応の切り替え: 効果の報告はあるが、対照群の質で結果が変わる
- ワーキングメモリ・抑制: 横断研究では関連があるが、訓練効果は不明瞭
- 言語・知能全般(g因子): 効果を示す頑健な証拠はない
訓練研究の一般則として、訓練した課題は上達し、よく似た課題には波及するが、知能全般への波及(遠転移)は限定的です。ゲームも例外ではありません。この原則はIQは上げられるかで詳しく扱っています。
ゲーム経験は分野別スコアに出る
ゲーム経験と関係が深いのは、図形の回転や位置関係を扱う空間推理と、規則性を素早く見つけるパターン認識です。分野ごとのスコアが総合IQとどう関係するかは分野間の相関データにまとめています。
自分の得意分野を確かめたい場合は、BrainRankの無料IQテストが空間推理・パターン認識・論理的推論・分類能力の4分野・20問(約10分)を項目反応理論(IRT)で採点し、分野ごとの傾向を返します。ゲームで鍛えた能力がどの分野に出ているかを見るのに向いています。結果は娯楽・自己理解のための推定値であり、医療・診断目的の検査ではありません。
よくある質問
- ゲームをするとIQは上がりますか?
- 知能全般が上がるという証拠はありません。アクションゲームで視空間認知や注意の課題成績が伸びたという報告はありますが、対照群の質を揃えたメタ分析では効果がほぼ消えています。伸びるとしても、ゲームで使う能力に近い領域に限られます。
- ゲームは脳に悪いのですか?
- ゲームそのものが認知能力を下げるという頑健な証拠もありません。子ども約2,000人を調べた2022年の研究では、1日3時間以上ゲームをする群のほうが抑制課題とワーキングメモリ課題の成績が良好でした。ただし横断研究であり、睡眠や学習の時間を奪う影響は別に考える必要があります。
- どの種類のゲームが認知能力に関係しますか?
- 研究で効果が報告されているのは主にアクションゲーム(一人称視点シューティングなど、素早い判断と注意の切り替えを要するもの)です。パズルや脳トレ系ゲームは、そのゲーム自体は上達しても他の課題への転移は限定的です。
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編集・免責事項
BrainRank編集部
本記事はBrainRank編集部が、CHC理論・項目反応理論(IRT)など心理測定に関する学術文献を参照して執筆・編集しています。記載している統計・割合は、平均100・標準偏差15の正規分布モデルに基づく算出値です。
本サイトのテストは娯楽・自己理解を目的とした推定値を提供するものであり、医療・臨床目的の検査や公式な心理検査(知能検査)ではありません。