田中ビネー知能検査とは?IQの出し方・ⅤとⅥ・WISCとの違い

要点: 田中ビネー知能検査は、田中寛一が1947年に発表したビネー式知能検査の日本版で、広く使われている田中ビネー知能検査Ⅴ(2003年刊行)は2歳から成人までが対象です。Ⅴでは2〜13歳は年齢級ごとの問題から精神年齢を求め、「精神年齢÷生活年齢×100」の比率IQを出し、14歳以上は原則として結晶性・流動性・記憶・論理推理の4領域の偏差知能指数(DIQ)を出します。2024年に第6版のⅥが刊行され、13歳までも偏差知能指数で表すようになりました。療育手帳の判定で最もよく使われる検査で、Ⅴは保険診療の対象(280点)ですが、Ⅵは2026年時点で対象外です。同じ子どもでもWISCより高く出た報告があり、数値を別の検査と直接比べることはできません。
田中ビネー知能検査とは、フランスのビネーが考案した知能検査をもとに田中寛一が1947年に作った日本の個別式知能検査で、検査者と1対1で、2歳から成人まで受けられます。広く使われている田中ビネー知能検査Ⅴ(2003年刊行)では、13歳までは「何歳程度の問題まで解けるか」を示す精神年齢からIQを出し、14歳以上は領域ごとの偏差知能指数を出します。この記事では、IQの出し方、2024年に出たⅥとの違い、療育手帳での使われ方、WISCとの違い、どこで受けられて費用はいくらかを、発行元や厚生労働省の資料をもとに整理します。
田中ビネー知能検査とは:2歳から成人まで使う日本の個別式検査
ビネー式の知能検査は、1905年にフランスのビネーとシモンが作った検査に始まります。田中ビネー知能検査はその日本版で、1947年の田中寛一『田中びねー式智能検査法』のあと、1954年・1970年・1987年に改訂されました。2003年の田中ビネー知能検査Ⅴは17年ぶり5回目の改訂で、2001年5月〜12月に987人を対象に標準化されています(大川ら、2003年、立命館人間科学研究)。発行元の田研出版は2024年に第6版の田中ビネー知能検査Ⅵを刊行しました。
検査は1歳級から13歳級までの年齢級ごとの問題と、成人級の問題でできています。各年齢級には、その年齢の6〜7割が通過する問題が置かれています(大川ら、2003年)。1歳級の問題も解けない子どもには、ケアの参考にする「発達チェック」があり、発行元はこれを診断としては扱わないとしています(田研出版)。ビネー式とウェクスラー式の考え方の違いはIQテストの歴史とWAISとは?で扱っています。
IQの出し方:13歳までは精神年齢と比率IQ、14歳以上は偏差IQ
田中ビネーⅤは、2〜13歳では知能指数(IQ)と精神年齢(MA)を出し、14歳以上は原則として偏差知能指数(DIQ)を出して精神年齢は出しません(大川ら、2003年)。13歳までのIQは比率IQと呼ばれ、横浜市の答申が示すとおり「生活年齢分の精神年齢に100を乗じて」求めます(横浜市)。
- 生活年齢6歳0か月・精神年齢7歳0か月なら、7÷6×100で比率IQは約117
- 生活年齢8歳0か月・精神年齢6歳0か月なら、6÷8×100で比率IQは75
- 精神年齢と生活年齢が同じなら、比率IQはちょうど100
比率IQは「実年齢より何歳ぶん先か・遅れているか」を直感的に表せる反面、同じIQでも年齢によって分布上の位置(何人に1人か)が同じとは限りません。そのため14歳以上は、同年齢集団の中での位置を表す偏差知能指数に切り替えます。14歳以上では結晶性・流動性・記憶・論理推理の4領域の領域別DIQと総合DIQを出します(田研出版)。偏差IQの考え方はIQとは、結晶性と流動性の違いは流動性知能と結晶性知能で解説しています。
ⅤとⅥの違い:2024年に第6版が出た
田研出版は2024年7月に田中ビネー知能検査Ⅵの刊行を告知し、第6版になったと説明しています(田研出版)。Ⅵの大きな変更は結果の表し方で、2歳0か月〜13歳11か月の主な指標が精神年齢と偏差知能指数(DIQ)になり、14歳以上は領域別DIQと総合DIQを出します。行政上の措置で成人の比例IQ(比率IQ)が必要な場合は、前版のⅤを使うよう案内されています(田研出版)。
もう一つの違いは保険診療の扱いです。発行元によると、Ⅵは診療報酬の算定対象に含まれておらず、令和8年度の改定でも収載は見送られました(田研出版、2026年7月)。当面はⅤとⅥが併用されるため、結果を受け取ったらどちらの版で検査したか、13歳までなら比率IQか偏差IQかを確認すると読み違いを防げます。
療育手帳の判定で最もよく使われる検査
療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に交付され、判定の基準は自治体ごとに定められています。厚生労働省の令和6年度の調査では、判定機関が最もよく使う検査として田中ビネー知能検査を挙げた割合が61.3%で最多でした(厚生労働省)。2歳から実施でき、1歳級の問題や発達チェックで発達の初期段階まで見られることが、幼い子どもの判定に使われる理由です。
国の目安は重度(A)が「知能指数が概ね35以下」などで、判定機関が交付の上限とするIQは「概ねIQ75」が52%、「概ねIQ70」が27%と分かれています(こども家庭庁、2024年)。たとえば横浜市は田中ビネー知能検査Ⅴを使い、重度(A2)をIQおおむね21以上35以下、中度(B1)を36以上50以下としています(横浜市)。IQ70〜84の扱いは境界知能とは?で詳しく整理しています。
WISCとの違い:対象年齢・結果の表し方・数値の出方
子どもの知能検査でもう一つよく使われるのがWISCです。最新のWISC-Ⅴは5歳0か月〜16歳11か月が対象で、全検査IQに加えて言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度の5つの主要指標を出し、全検査IQまでの実施はおよそ45〜60分です(日本文化科学社)。2歳から使え、全体の発達水準を年齢で表せる田中ビネーに対し、WISCは分野ごとの得意・不得意(凸凹)を比べるのに向いています。
両者の数値はそのまま比べられません。開発者のデータでは、5〜6歳の97人で田中ビネーⅤのIQの平均が129.9、WISC-IIIの全検査IQの平均が115.6(相関0.693)でした(大川ら、2003年)。別の15人を対象にした調査でも田中ビネーⅤが88.9、WISC-IIIが78.6で、田中ビネーⅤのほうが有意に高くなっています(日本教育心理学会総会発表論文集、2010年)。「前は田中ビネーで90、今回のWISCで80」という差は、能力が下がったとは限りません。WISCの結果票の読み方はWISCの結果の見方、子どもの検査全般は子供のIQテストで扱っています。
どこで受けられる?費用と受ける前に知っておきたいこと
療育手帳のための判定なら、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所が窓口です。医療機関で受ける場合は保険診療になることがあり、診療報酬(2026年6月施行)では田中ビネー知能検査Ⅴが「操作が複雑なもの」280点、WISC-Ⅴが「操作と処理が極めて複雑なもの」450点に区分されています(厚生労働省)。1点10円なので、3割負担なら検査料の自己負担は田中ビネーⅤで840円、WISC-Ⅴで1,350円です(診察料などは別)。
所要時間について発行元は公表していませんが、診療報酬の区分では「検査及び結果処理に概ね1時間以上」を要する検査にあたります。同じ検査を短い間隔で繰り返すと問題に慣れて得点が上がりやすいため、再検査の時期は検査機関と相談してください。結果は数値だけでなく、どの年齢級のどの問題でつまずいたかという所見とあわせて説明を受けるのが大切です。
オンラインのIQテストは、田中ビネーのような個別式検査の代わりにはなりません。BrainRankの無料IQテストは、大人や中高生が自分の推論力の目安を知るためのもので、空間推理・パターン認識・論理的推論・分類能力の4分野・20問(約10分)を項目反応理論(IRT)で採点し、平均100・SD15の偏差IQの考え方で推定値を返します。比率IQと偏差IQの違いを自分の結果で確かめたい保護者の方にも使えます。受検は無料・登録不要で、推定IQを含む結果表示は300円(税込)の1回払い(自動更新なし)です(初回表示から24時間は再表示でき、表示中に画像・PDFで保存できます)。結果は娯楽・自己理解のための推定値で、療育手帳の判定や医療・診断目的には使えません。
よくある質問
- 田中ビネーのIQとWISCのIQは同じように比べられますか?
- 比べられません。田中ビネーⅤは13歳までを精神年齢と生活年齢の比で表す比率IQ、WISCは同年齢集団の中での位置を表す偏差IQで、作り方が違います。開発者のデータでは5〜6歳の97人で田中ビネーⅤの平均が129.9、WISC-IIIの全検査IQの平均が115.6で、別の15人の調査でも田中ビネーⅤが88.9、WISC-IIIが78.6と田中ビネーのほうが有意に高くなりました。経過を見るときは同じ検査どうしで比べてください。
- 田中ビネー知能検査はどこで受けられますか?費用は?
- 療育手帳の判定では、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所で検査を受けます。医療機関(発達外来や児童精神科など)では保険診療で受けられる場合があり、田中ビネーⅤは診療報酬の「操作が複雑なもの」280点なので、3割負担なら検査料の自己負担は840円です(診察料などは別)。2024年刊行のⅥは2026年7月時点で診療報酬の対象に含まれていません。公的機関や教育相談での実施の有無と費用は、各機関に確認してください。
- 田中ビネーⅤとⅥは何が違いますか?
- Ⅵは2024年に刊行された第6版です。Ⅴでは2〜13歳の結果を精神年齢と比率IQで表しましたが、Ⅵでは2歳0か月〜13歳11か月の主な指標が精神年齢と偏差知能指数(DIQ)になり、14歳以上は領域別と総合の偏差知能指数を出します。行政上の手続きで成人の比率IQが必要な場合は前版のⅤを使うよう案内されており、Ⅵは2026年7月時点で保険診療の対象外です。結果を受け取ったら、どちらの版で検査したかを確認してください。
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編集・免責事項
BrainRank編集部
本記事はBrainRank編集部が、CHC理論・項目反応理論(IRT)など心理測定に関する学術文献を参照して執筆・編集しています。記載している統計・割合は、平均100・標準偏差15の正規分布モデルに基づく算出値です。
本サイトのテストは娯楽・自己理解を目的とした推定値を提供するものであり、医療・臨床目的の検査や公式な心理検査(知能検査)ではありません。