レーヴン漸進的マトリックスとは?非言語IQ検査の定番を解説
2026-08-01

レーヴン漸進的マトリックス(Raven's Progressive Matrices, RPM)は、言語をほとんど使わずに推論能力を測る知能検査として、1938年の発表以来もっとも広く使われてきた形式です。オンラインのIQテストで目にする「3×3のマス目の空欄を埋める問題」は、ほぼすべてこの検査を原型としています。
どんな検査か
受験者に提示されるのは、3×3(または2×2)のマス目に並んだ抽象図形で、右下の1マスだけが空白になっています。マス目全体を貫く規則を見抜き、選択肢から空欄に入る図形を選ぶ——これが唯一の課題形式です。
指示以外に言語を必要とせず、教科の知識も前提としないため、母語や学歴の異なる集団にも同じ形式で実施できます。この特徴から、国際比較や、言語障害のある受験者の評価にも用いられてきました。
「漸進的(progressive)」の意味
名前にある「漸進的」は、問題が進むにつれて難度が段階的に上がる設計を指します。難度を決めているのは図形の複雑さではなく、1問のなかで同時に成立している規則の本数です。
Carpenter, Just & Shell(1990年)の分析は、RPMの難度がこの「同時に働く規則の数」と、それを保持するワーキングメモリの負荷でおおむね説明できることを示しました。序盤は1本の規則、後半は2〜3本の規則が重なります。
実際の解き方は「行方向 → 列方向 → 両者の関係式」の順に確認するのが定石です。手順の詳細は行列推理問題の解き方で3ステップに分けて解説しています。
なぜg因子の指標とされるのか
RPMは、多くの認知課題のなかでもg因子との相関がとりわけ高いことで知られ、しばしばg因子の代表的な指標として扱われます。理由は、この形式が知識の蓄積をほとんど要求せず、その場で規則を構成する力——CHC理論でいう流動性推理(Gf)——をほぼ純粋に取り出しているためです(g因子とCHC理論)。
逆にいえば、RPMが測っていないものも明確です。語彙・一般知識といった結晶性知能(Gc)、処理速度、対人的能力は、この形式では評価できません(流動性知能と結晶性知能)。RPM単独の結果を「総合的な知能」と読むのは誤りです。
「文化に中立」という評価の限界
RPMは長らく「カルチャーフリー」あるいは「カルチャーフェア」な検査と呼ばれてきましたが、この評価は現在では慎重に扱われます。言語を使わなくても、抽象図形を扱う経験、紙面上の規則を探すという課題設定への慣れ、テスト形式そのものへの習熟度は、教育環境によって差が出るためです。
実際、RPMの平均得点は20世紀を通じて各国で上昇し続けました。生物学的な知能が数十年で大きく変わったとは考えにくく、抽象的思考への慣れなど環境要因の寄与が大きいと解釈されています(フリン効果)。国別平均IQの比較に慎重さが必要な理由も同じです(国別の平均IQは信頼できる?)。
正式なRPMとオンラインテストの違い
正式なRPMは著作権のある心理検査で、標準化された手順のもと、資格を持つ実施者が管理します。ウェブ上で無料公開されている「マトリックス問題」はRPMそのものではなく、同じ形式を模した独自問題です。
この違いは結果の扱いに直結します。正式な検査は代表的なサンプルで標準化されているため他者との比較が可能ですが、模した問題の場合、標準化の質が結果の意味を左右します。この点は無料IQテストの精度やWAISとはで詳しく扱っています。
同じ形式の問題を実際に解く
BrainRankの無料IQテストは、RPMと同系統の行列・系列問題を含む4分野・20問(約10分)を項目反応理論(IRT)で採点します。問題ごとの難易度と識別力をモデルに組み込んでいるため、正答数ではなく解答パターンから推定IQを算出します。形式に慣れておきたい場合はパターン認識問題のコツも参考になります。
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編集・免責事項
BrainRank編集部
本記事はBrainRank編集部が、CHC理論・項目反応理論(IRT)など心理測定に関する学術文献を参照して執筆・編集しています。記載している統計・割合は、平均100・標準偏差15の正規分布モデルに基づく算出値です。
本サイトのテストは娯楽・自己理解を目的とした推定値を提供するものであり、医療・臨床目的の検査や公式な心理検査(知能検査)ではありません。